先日、「在留カードを確認するのはプライバシーの観点からNGだ」という話に対して、どんな判断やねん、というツッコミを入れました。
在留カードを確認しないというのは、不法就労助長に直結しかねませんし、会社自身がリスクを負うことになります。
だから、さすがにそれはありえません、という話でした。
そして今回、実際に逮捕報道が出ました。
いわゆる「技人国」で雇用した外国人を、単純労働に従事させていたという事案です。
リンクは本文に貼っておきます。
ここだけ切り取ると、「外国人を雇ったら逮捕されるのか」という、少し怖い印象を受けるかもしれません。
ですが、きちんと読み解くと、問題の本質はそこではありません。
今回は、その整理をしてみようと思います。
在留資格は「会社への許可」ではない
まず大前提として、外国人が日本で活動する場合、「何をしてよいか」は入国の時点で枠が定められます。
在留資格は二十数種類あり、それぞれに対応する活動内容が決まっています。
やろうとする活動に対応した在留資格で入国する。
これが基本ルールです。
たとえば、「経営・管理」の在留資格で入国しているのに、サッカーの試合で報酬を得てプレーしていたら、それは当然アウトです。
在留資格の枠を超えて活動することはできません。
在留資格は、会社への入社許可ではありません。
あくまで「活動の許可」です。
なぜここまで枠があるのか
では、なぜここまで枠組みが厳格なのか。
端的に言えば、労働市場との関係です。
外国人労働者と日本人労働者は、同じ市場で競合します。
椅子取りゲームのような構造になる以上、日本人の雇用を守るという政策目的がまずあります。
そのうえで、「日本人では代替しにくい分野」に限って在留資格を与える、という立て付けです。
通訳や専門的IT業務、あるいは高度なスポーツ選手などが典型です。
“その人である理由”が求められるわけです。
今回の報道のポイント
今回の報道では、IT分野を理由に在留資格を得ていたにもかかわらず、実際には野菜加工の単純作業に従事していたとされています。
野菜を切る業務そのものを軽視するつもりはありません。
ただ、「その在留資格である必要性」はどこにあったのか、という問題です。
そこが崩れると、制度の前提が崩れます。
人手不足という現実と、制度の切り分け
確かに、日本の労働市場は人手不足です。
特に現場職、製造、介護などは深刻です。
だからといって、「足りないから埋めればいい」という発想で、在留資格の枠を横断してしまうと、今回のような事案になります。
かつては、いわゆる技人国が“穴埋め”的に使われていた時代もあったと聞きます。
ですが現在は、育成就労など、現業分野向けの制度が整備されつつあります。
枠は枠として切り分ける。
これが今の流れです。
「知らなかった」は通るのか
そして、「知らなかった」は通るのか。
正直に言えば、通りません。
在留カードの確認は基本です。
見ること自体が問題なのではなく、「何も確認しないこと」が問題です。
もっと言えば、カードの表面だけ見ても足りません。
実際の業務内容と在留資格の整合性を見る必要があります。
ただ、ここは難しい。
「技術・人文知識・国際業務」と言われても、何ができるのか分からないという企業の感覚も理解できます。
だからこそ、「就労資格証明書」という制度が用意されています。
万能ではありませんし、実務上のタイムラグもあります。
それでも、確認のための制度は存在しています。
最後にひとつだけ
最近の政策の流れも、「外国人を使うな」ではありません。
「適切に使ってくれ」という方向です。
外国人材は安い、という時代でもありません。
仮に安かったとしても、雑な確認で逮捕リスクを抱えることは、本当に“安い”のでしょうか。
そこを一度立ち止まって考える必要があります。
制度は面倒です。
ですが、面倒だから無視する、は通らない時代です。
今回の報道は、そのことを改めて示しているのだと思います。


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