建設業法において、「建設業者」と「建設業を営む者」という言葉が使われていますが、両者には重要な違いがあります。特に建設業の許可に関わる場面では、この違いを正しく理解しておくことが必要です。本記事では、それぞれの定義と違いについて解説します。
1. 「建設業者」とは?
「建設業者」とは、建設業法第3条に基づき、国土交通大臣または都道府県知事から建設業の許可を受けた者を指します。(同2条3項)つまり、建設業法上の正式な建設業者となるためには、一定の要件を満たした上で許可を取得しなければなりません。
(定義)
第二条 この法律において「建設工事」とは、土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう。
2 この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。
3 この法律において「建設業者」とは、第三条第一項の許可を受けて建設業を営む者をいう。
4 この法律において「下請契約」とは、建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者と他の建設業を営む者との間で当該建設工事の全部又は一部について締結される請負契約をいう。
5 この法律において「発注者」とは、建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者をいい、「元請負人」とは、下請契約における注文者で建設業者であるものをいい、「下請負人」とは、下請契約における請負人をいう。
(補完)建設業者の要件
建設業者として許可を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者(経管)の設置
- 専任技術者の配置
- 財産的基礎(資本金や自己資本の要件)
- 誠実性(法令違反がないこと)
- 欠格要件に該当しないこと
許可を受けた「建設業者」は、請負契約に基づき建設工事を施工することが可能になります。
2. 「建設業を営む者」とは?
一方で、「建設業を営む者」とは、建設業法に基づく許可の有無に関わらず、実際に建設工事を請け負っている者を指します。したがって、許可を持たない個人事業主や法人であっても、建設工事の請負業務を行っている場合は「建設業を営む者」に該当します。
ちょうど先の2条4項に「営む者」が登場していました。
(定義)
第二条
4 この法律において「下請契約」とは、建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者と他の建設業を営む者との間で当該建設工事の全部又は一部について締結される請負契約をいう。
(補完)許可が不要な「軽微な工事」とは?
建設業法において許可が不要となる「軽微な工事」とは、以下のような工事です。
- 建築一式工事:1,500万円未満の工事、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
- その他の建設工事:500万円未満の工事
この範囲内であれば、許可を受けていない者でも「建設業を営む者」として合法的に事業を行うことができます。
3. 両者の違いと注意点
項目 | 建設業者 | 建設業を営む者 |
---|---|---|
許可の有無 | 必要 | 不要(軽微な工事に限る) |
法的地位 | 許可業者として正式に認められる | 許可の有無を問わず、建設工事を請け負う者 |
施工できる工事 | 許可業種ごとの工事 | 軽微な工事のみ |
違反リスク | 許可要件を満たす必要あり | 無許可での請負は違法となる可能性あり |
建設業を営む場合、無許可で許可が必要な工事を請け負うと「無許可営業」となり、建設業法第47条に基づき罰則の対象となります。そのため、自身が「建設業者」として許可を受けるべきか、許可不要な範囲内で事業を行うかを適切に判断することが重要です。
まとめ
- 「建設業者」 とは、建設業法の許可を受けた者。
- 「建設業を営む者」 とは、許可の有無に関係なく建設工事を請け負う者。
- 許可が不要な「軽微な工事」以外は、許可を取得しなければならない。
- 許可なしで一定規模以上の工事を請け負うと法違反になるため、十分注意が必要。
建設業を営む上で、許可の要否を正しく理解し、適切に事業を進めることが重要です。もし建設業の許可取得について不明な点があれば、専門家に相談することをおすすめします。
追記
ここまで読んでみて、「こんな言葉遊びに意味があるのか」と思われた方は、是非次の記事もご覧ください。

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