今日は、日本行政書士会連合会──いわゆる「日行連」で開催された研修会に参加してきました。テーマは、行政手続のデジタル化に向けた取り組みの一つである「手続きジャーニー」についての案内です。将来の行政手続の姿を考えるうえで非常に興味深い内容だったので、僕が聞いた範囲の話を整理しながら、感じたことを書いてみようと思います。
タイトルを見て“ジャーニー”と聞くと、ウマ娘好きの僕としてはどうしても「ドリームジャーニー」を連想してしまうのですが、もちろん今日はそちらではなく行政手続の話です。
■ 手続きジャーニーとは?
今回説明された手続きジャーニーは、GビズIDのポータル内部に新しく追加される予定の機能です。行政書士が普段扱っているような行政手続──許認可・届出・補助金など──について、必要になりそうな手続をAIが整理して提示してくれる仕組みになるとのことでした。
利用者が、

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といった感じで、
- いま取り組んでいる事業
- これから始めたい事業
- 事業の規模や方向性
等の情報を入力すると、AIが行政機関の公開情報を横断的に読み取り、「この事業なら、こういう手続が考えられます」といった形で案内してくれるそうです。
ここで重要なのは、あくまでAIの参照元は“行政が公開している情報”に限定されている点でしょうか。
SNSや動画サイトのような雑多な情報は参照しないため、「変な噂を拾ってくる」という方向のハルシネーションが起きにくいという説明でした。
■ ただし、精度は75%程度。
現時点での正確性は「75%程度」とのことでした。
身も蓋もない言い方をすると、行政体として現状100%というと、漏れがあった時になんとも言えない状況になってしまうとかw
研修でも強調されていましたが、今回の段階はあくまで“オープンベータ”的に公開し、利用者のフィードバックを踏まえて改善していくフェーズとのこと。僕自身も、完璧を求めて公開が遅れるより、まず触ってみて課題を洗い出すほうが正しいと思います。
■ 行政書士の仕事が奪われる?それとも広がる?
手続きジャーニーの説明を聞くと、行政書士の立場としては「仕事が減るのでは?」と思う部分もあります。
特に建設業許可のような手続では、必要書類や要件が一覧で表示されるようになるため、一見すると専門家の必要性が下がるように感じます。
ただ、僕はむしろ逆に「これはチャンスでもある」と感じました。
■ ① 行政手続の存在自体が“見える化”される
行政書士の業務は、依頼者が行政手続の存在を知らないと始まりません。
ところが現実には、
- そもそも手続があることを知らない
- 手続が必要なのか不要なのかも分からない
- 何を調べればよいかも分からない
という状態が結構あるようです。
僕自身もよく、
「こういう事業をしようと思うのですが、何が必要ですか?」
「この活動を始めたら、何か許可は要りますか?」
といった質問を受けます。
必要がある場合はそのまま「オシゴト」の話になるのですが、他方で「それは不要ですよ」と答えた瞬間に、話が止まってしまうことがよくある。不要である理由も、他に検討すべき制度も、相手からは見えないからです。
手続きジャーニーによって、
- “必要かもしれない手続”
- “不要な場合の理由”
- “関連する制度の存在”
こうした周辺情報まで利用者自身が把握できるようになるため、相談の質が必ず上がります。
これは行政書士にとって、実は非常に大きなメリットです。
■ ② 共通言語が生まれると、やり取りが一気に楽になる
行政書士と依頼者では、行政手続に関する“言語”が大きく異なります。
例えば、
- 建設業許可の「経管」「専技」の意味
- ドローンでいう「特定飛行」「目視外」「夜間」などの区分
- 手続でいう「添付書類の原本・写しの関係」
- 法律でいう「要件」と「効果」の違い
これらをゼロから説明するのは本当に大変です。
ゲームやスポーツで例えると、同じ“ゲーム好き”“スポーツ好き”でも、ジャンルが違えば使う言葉が違うのと同じことです。
格闘ゲームの用語をカードゲームの人は知らないし、その逆も同じ。目的は似ていても言語体系が違う。
行政手続もまさにこれで、専門家と依頼者が同じ情報を見ていないと、会話のスタートラインが揃いません。
そこで手続きジャーニーが“共通画面”として機能すれば、
「ここに載っているこの手続きのことですよね?」
「この項目が、専門家が言う“この書類”に該当するんですね」
といったコミュニケーションが取れるようになります。
これは相談業務において非常に大きな改善です。
■ 行政書士は本来“いなくてもいい状態”が理想
僕は前から一貫して言っていますが、行政手続は本来申請者自身ができるのがベストです。
- ドローン申請も自分でできる
- 確定申告も制度上は自分でできる
- 訴訟も本人訴訟という制度がある
行政書士が「いないと何もできない」という状態は健全ではありません。
専門家は、
“不安を減らすための存在”
であれば十分です。
その意味で、手続きジャーニーが「まず自分で理解する」ための助けになり、必要な部分だけ専門家に相談する流れが作られるのなら、それは行政書士制度にとっても好ましい姿だと思います。
■ 最後に:僕が手続きジャーニーに期待していること
僕は日常的に、
「こういう事業を始めたいが、何が必要なのか?」
「この活動をしても大丈夫か?」
という相談を受けます。
正直、僕自身も検索では限界があり、「不要」と答えるしかないケースもあります。
しかし不要と答えたところで、依頼者側には何も“根拠”が残らない。
手続きジャーニーが実装されれば、
- 利用者が自分で調べられる
- 整理された情報を見ながら話せる
- 共通言語でやり取りできる
という環境が整います。
行政書士にとって脅威ではなく、むしろ“相談の質を高めてくれるツール”として機能するのではないかと感じています。
来年3月の実装、僕も非常に楽しみにしています。
行政手続がどう変わっていくのか。その変化の瞬間を、僕たちはちょうど目の前で見られるのかもしれません。

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