「YouTubeで動画投稿してたんですが、再生数が増えて収益化条件を満たしてしまいました。これって、収益もらってもいいんでしょうか?」
昔々、こんな相談が事務所に持ち込まれたことがあります。今回はその方の事例をもとに、外国人の方がYouTuberとしての活動で収益を得るには何が必要なのか、整理してみたいと思います。
ただ、当然ながらクライアントの個人情報や勤務先などの具体的な部分は、かなりぼかして書きます。あくまで「外国人がYouTubeで収益を得るにはどう手続きすればいいか」の論点整理として読んでいただければと思います。
ご本人にもこの記事化については許可をいただいています。あの時はお世話になりました。
また、許可を得たということは、入管の方と具体的に話す機会はありません。『どういった点が評価されたのか?』というのはあくまで僕の予測です。制度や入管の立場に照らして考えれば、こうゆう部分は評価されたはず、という推測になります。
ちなみに僕自身、YouTuberという職業の在留資格に係るのは初めてだったので、調べながらお客さんと一緒に進めていったケースです。
前提:本人の在留資格
まず大前提として、この方はすでに「技術・人文知識・国際業務」(以下「技人国」)の在留資格で日本に入国していて、とある企業にお勤めの状態です。これ自体は何の問題もありません。
問題はここからで、技人国の枠で本業をやりつつ、YouTuberとして収益活動を「足す」となると、どういう手続きが必要なのか、というのが今回の主題でした。
所持している在留資格以外に基づいて収益を得ることは、原則として認められていません。一部例外はありますが(後述)、基本ルールはこれです。
さらに、外国人の在留資格には「一人一在留資格」という大原則があります。技人国に加えて何か別の在留資格をもう一つ持つ、ということはできません。
第十九条 別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者は、次項の許可を受けて行う場合を除き、次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に掲げる活動を行つてはならない。 一 別表第一の一の表、二の表及び五の表の上欄の在留資格をもつて在留する者 当該在留資格に応じこれらの表の下欄に掲げる活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬(業として行うものではない講演に対する謝金、日常生活に伴う臨時の報酬その他の法務省令で定めるものを除く。以下同じ。)を受ける活動
(出入国管理及び難民認定法第19条第1項)
なので、今回どういう手続きを取るのか、まずはかなり慎重に見極める必要がありました。
ポイント: 外国人は一人一在留資格が原則。本業の在留資格と別に何かを「足す」ことはできない。在留資格の枠外で収益を得るには資格外活動許可が必要(入管法19条)。
二通りの読み方:技人国の枠か、興行類型の資格外活動か
調べていくと、YouTubeで収益を得るという活動に関して、在留資格上は二通りの読み方ができることが見えてきました。
一つは技人国として読む方向です。動画編集の技術そのものを「理学の分野に属する技術」とみなす、あるいは動画の内容に着目して、人文知識や外国文化の基盤を有する~系の領域に属すると考えて、技人国の枠で読む考え方です。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで、企業内転勤の項から興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
(入管法別表第一の二の表「技術・人文知識・国際業務」の項)
もう一つは興行類型として読む方向です。あくまで「芸を見せて収益を得る」という側面に着目するアプローチで、こちらだと技人国とは別の活動類型になるので、資格外活動許可の話になります。
演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動
(入管法別表第一の二の表「興行」の項)
僕の見立てとしては、動画編集を業務の主体として捉えれば技人国寄りに読めて、配信内容そのもの=表現・パフォーマンスの面に重きを置けば興行類型として読みうる、という整理です。実際、動画編集者として技人国で雇用されている事例もネット記事で見たことがあります。
ただ、ここから先は考える人の理屈…つまり担当者の運用次第で揺れる領域でもあるな、というのが正直なところです。どちらで読むかによって、今後の手続きが少し変わってきます。
なにかしら理由を考えつつ、どちらかにチャレンジすることになります。
ポイント: YouTubeのような活動は、業務のどこを切り出すかで在留資格上の整理が変わりうる。動画編集に重きを置けば技人国、配信内容=表現面に重きを置けば興行類型として読みうる。人の解釈や申請者の状況によっては変わり得る。
初手:就労資格証明書を出してみた
このとき僕らがまず採った手段は、就労資格証明書交付申請でした。
就労資格証明書というのは、通常は勤務先が変わったときなどに「今持っている就労資格の範囲で、新しい職場の業務をやって問題ないですか」と入管にお伺いを立てる制度です。今回の場合は「今持っている技人国の枠で、このYouTubeの活動をやってもいいですか」という形で出してみたわけです。
これを先に試した理由はシンプルで、
- 審査がそんなに長くかからない
- 手数料がそこまでかからない
- オンラインで申請ができる
の三つです。実費もそうですが、申請に掛けるコストが低い手段から先に試してみよう、という判断でした。実際の申請も、僕が理由書まわりをフォローしつつ、お客さん自身にオンラインで進めてもらいました。
ちなみに、実費の方は不許可の場合はかかりません。なので、とりあえず出してみるという形としては、オンラインが使えるこちらがベストでしょう。
結果としては、申請人の活動は「該当しない」という回答が返ってきました。
これがなぜかというと、技人国は「本邦の公私の機関との契約に基づいて」行う活動が前提になっている在留資格だからです。条文を見るとはっきりそう書かれています。
読めばその通りなのですが、この「契約」の解釈が、僕としては少し幅があるんじゃないかと見ていました。
YouTubeに広告収益を申請して、それをYouTube側が承諾する、という流れはある種の契約に近いんじゃないか、と。なので、これは契約に当たるという建付けで一度出してみたわけです。
ただ、入管のロジック的にはこれは「契約」に当たらないという判断でした。
契約とは?という民法的な議論に立ち入ると、「そうか?」という気もしないではないですが、一先ず入管にこっちではないといわれたので、従って次に行きましょう。
(尚、「本邦」という部分もありますが、GoogleJapanという民法的な議論に立ち入ると、「そうか?」という気もしないではないですが、一先ず入管にこっちではないといわれたので、従って次に行きましょう。
(尚、「本邦」という部分もありますが、GoogleJapan等の支社があるので、これは問題ないかなと。)
ポイント: 技人国の枠で読めるなら、本来は就労資格証明書交付申請で対応できる。手数料は許可時払いで、審査期間が短く、オンライン申請も可能。ただし「本邦の公私の機関との契約」要件の解釈次第で不該当になる場合がある。YouTubeでの広告収益関係はこの「契約」に当たらないとされた。
二手目:興行類型の資格外活動を個別許可で
そこで二つ目の選択肢として、興行類型での資格外活動許可へ方針を切り替えました。
結果的に、こちらは無事に通りました。ネット配信において収益を得ることができる、というかなり包括的な形での許可となり、お客さんも僕も「よかったね」と万事ハッピーで決着、という流れです。
ただ、ここで終わらせてしまうともったいないので、なぜこれが通ったのか、改めて整理しておきたいと思います。
ポイント: 技人国の枠で読めないなら、資格外活動の個別許可で通すルートになる。今回は興行類型で許可が下りた。
なぜ通ったのか:本業に支障がないことの「客観的証明」
資格外活動の大前提として、あくまでこれは副業というか、本業に対するおまけの位置づけです。なので、本業に差し障りがないことを、こちらから積極的に証明してあげる必要があります。
今回のお客さんは、相談に来られた時点ですでに収益化の条件を満たしていました。満たした上で、収益申請はせずに止めている、という状態が続いていたんですね。
これが結果的に大きく効いたのではないかと考えています。
すでに一定期間活動していて、再生数や投稿頻度の実績がある。その実績ベースで「月々の活動と収益はこんなものでしょう」という見込みを、入管に対して具体的な数字で示すことができました。
あくまで余暇時間を利用した活動で、これくらいの収益見込みなんですよ、ということを客観的に示せたのが、今回の最大のポイントだったと思っています。
「副業の方が本業を食ってしまう」と入管に思われないこと。ここを実績で詰められたのは大きかった。
もう一点、細かいですが効いたと思うのは、収益化条件を満たしながら、まだ収益化はしていなかったということです。条件を満たした時点で「これは何かしら手続きが必要だな」と一旦立ち止まって相談へ、そして申請に舵をとってくれた。法令順守のスタンスをこちらで明確に見せられたのも、印象としてプラスに働いたと思います。
ポイント: 資格外活動の個別許可で通すなら、本業に支障がないことの客観的証明が鍵。再生数や活動実績から「これくらいの収益見込み・活動量」と提示できるとよさそう。「条件を満たした時点で立ち止まって相談に来た」という事実自体も、法令順守のスタンスとして効く。
入管担当者からの示唆と「記録を残す」価値
もう一つ、今後の考え方として大事な話があります。
実は最初の就労資格証明書を出したとき、入管の担当者からちょっとした教示をもらいました。
外国人の方が、現在持っている就労資格以外で収益を得ることは原則禁止です。ただ、これには例外があります。
たとえば単発の講演料等、イベントで講師として話をして発生する単発の講演料のようなものは、基本的に資格外活動許可なしで受け取ってもOKという扱いになっています。
これは入管法19条1項のカッコ書きで「業として行うものではない講演に対する謝金、日常生活に伴う臨時の報酬その他の法務省令で定めるもの」が除外されていて、具体的な中身は施行規則19条の3で定められています。
第十九条の三 法第十九条第一項第一号に規定する業として行うものではない講演に対する謝金、日常生活に伴う臨時の報酬その他の報酬は、次の各号に定めるとおりとする。 一 業として行うものではない次に掲げる活動に対する謝金、賞金その他の報酬 イ 講演、講義、討論その他これらに類似する活動 ロ 助言、鑑定その他これらに類似する活動 ハ 小説、論文、絵画、写真、プログラムその他の著作物の制作 ニ 催物への参加、映画又は放送番組への出演その他これらに類似する活動 二 親族、友人又は知人の依頼を受けてその者の日常の家事に従事すること(業として従事するものを除く。)に対する謝金その他の報酬
(出入国管理及び難民認定法施行規則第19条の3)
YouTubeの動画収益、実はこっち(一号ニ「催物への参加、映画又は放送番組への出演その他これらに類似する活動」)に該当するんじゃないか、という読み方をしている担当者もいるみたいです。そっちで読めるなら、そもそも資格外活動許可自体が要らない、ということになります。
ただ、さすがにお伺いを立てないと怖いというのがあって、今回は資格外活動の方も申請しました。
このとき僕が大事にしたのは、記録を残しておくことでした。
「資格外活動許可を申請しました、でもこういう理由で必要ないとされました」という記録が公的に残るのと残らないのとでは、次の在留期間更新のときの安心感が全然違います。
将来、更新時に「これは何だ」と聞かれたとしても、「いや、こういう経緯があって、入管がこういう判断をしたんですよ」と記録を残しておけば堂々と説明できる。これがやっぱり大事だなと。
なので、申請の理由書の中でも「あくまで法令を守るためにお伺いを立てています。これが資格外活動なら許可してほしい。違うのなら何で違うのか示してほしい」という趣旨を込みで出しました。
結果としては今回、「資格外活動の許可で対応」という形で着地しました。
ポイント: 入管法19条1項のカッコ書き+施行規則19条の3により、「業として行うものではない」一定の活動への報酬は、資格外活動許可なしで受け取れる例外として整理されている。YouTube収益をここで読む運用もありうる。ただし「申請したが不要と判断された」記録自体が、次の更新時の安全装置として機能する。許可された記録だけでなく、申請した事実が公的に残ることそのものに意味がある。
振り返って:外国人の副業はそう簡単な話じゃない
最後に、振り返って思うことを少しだけ。
副業って今、本当に簡単になってきている世の中だと思います。日本人なら副業前提みたいな会社も普通にありますし、YouTubeで広告収入、メルカリで物販、ブログでアフィリエイト、いろんな選択肢が手の届くところにある。
ただ、外国人の方が副業をするというのは、そう簡単な話ではありません。在留資格との関係を一つひとつ確認してあげなきゃいけませんし、勝手にやってしまうと次の更新時に素行不良で減点がついてしまうリスクもあります。
なので、もし外国人の方が副業をするのであれば、絶対に資格外活動許可の検討を僕はお勧めしておきます。
出した上で「ダメ」と言われたらダメということだし、「必要ない」と言われたらその記録自体が次の更新に向けての安全装置になる。どちらに転んでも、申請したという事実が残ること自体に意味がある。
YouTubeに限らず、本来の在留資格に基づく仕事以外でお金が入ってくる場面では、必ず一旦立ち止まる。これが外国人の副業を考えるときの基本姿勢です。
ポイント: 外国人の副業は日本人の副業と構造が違う。在留資格との関係を一つひとつ確認する必要があり、勝手にやると次の更新に響く。本業以外でお金が入る場面では必ず一旦立ち止まり、資格外活動許可の申請をかけるのが基本姿勢。
引用:https://laws.e-gov.go.jp/law/326CO0000000319#Mp-Ch_4-Se_1-Ss_1-At_19


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