最近、ネットを散策していて、ちょっと気になるニュースを見かけました。
人気の外国人YouTuberの方が、在留資格まわりでトラブルが出てしまって、配信をしばらく休止する、という流れになったみたいですね。
はじめましての方だったので、少し情報を調べてみたんですが、在留資格を考える上でいくつかポイントというか、勘違いされがちなところ、ここはもう少し押さえておけたらよかったのに、と思うところが出てきたので、記事の話題として取り上げようかなと思います。
念のためお話ししておきますと、僕として彼女ご自身を攻撃する意図はありませんし、その理由もありません。
あくまで彼女が公開していた情報をもとに、「この制度はこうなっているよね」という整理をするのが目的になりますので、そこのところはよろしくお願いします。
ご本人の動画を拝見した感じ、大きく分けて3つのポイントがあるかなと思いました。
1つ目は、在留期間そのものをどう捉えるかという話。1年で更新が続いていることをどう読むか、という観点です。
2つ目は、経営管理ビザを切り口にした、就労ビザ全体の考え方。在留資格をとるとき、申請時点だけでなく、その後の更新まで見据えて組み立てる必要があるという話です。
3つ目は、帰化のロジックの話。ご本人が動画で説明されていたロジックは、ご本人の中では成立していますし、もっともではあるんですが、入管はそれを取れないんじゃないかという論点です。
内容が大きくなりそうなので、3つ別の記事に分けてお話しします。今回はその1本目、在留期間の話になります。
そもそも「在留期間」とは
在留期間というのは、申請した在留資格を用いて何年日本にいることができるかを表した年数のことです。基本的には1年・3年・5年といった区分が設定されます。特別な事情があって数か月、というパターンもあるんですが、まずは1年・3年・5年で覚えていただくのが一番わかりやすいかなと思います。
さて、この年数なんですが、残念ながら希望を出せばその通りに出るというものではありません。
出入国在留管理庁が公表している「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(令和8年1月最終改正)には、こう書かれています。
「在留資格の変更及び在留期間の更新は、(中略)法務大臣の自由な裁量に委ねられ、申請者の行おうとする活動、在留の状況、在留の必要性等を総合的に勘案して行っている」
希望の年数に対して、審査官の方がさまざまな項目をチェックして、そのチェックに応じて年数を決定する、という流れになるわけです。
ですので、当然ながら、1年よりも5年の方が入管からの評価は厚い、というのが客観的に見えてしまう部分ではあります。僕たち行政書士が業務で在留資格を確認するとき、この年数は結構見たりしますね。
ポイント: 在留期間(1年・3年・5年)は希望通りに出るものではなく、入管庁のガイドラインでも「活動・在留状況・必要性等を総合的に勘案」して判断されると明記されています。年数は入管側の評価が数字として現れたもの、と読むのが実務的です。
1年が続くことのシグナル
入管側の信用が数字として現れている側面ですので、この年数が1年というものが続くとなると、何か良くないものがあったのかな、というシグナルとして受け取った方がいいように思います。
特に、在留年数が長くなれば長くなるほど、本来的には信用を得ていく、というのが一般的な考え方ではあるんです。日本社会にとって問題のない人物だと評価されていくにつれて、在留期間も伸びていく。
ですので、日本にいる年数が積み重なっているのに、なぜか在留期間が伸びないというときには、入管が何かしら引っかかっているんだろうな、というところを考える必要があるフェーズになっている、と思っていただく方がいいと思います。
……数字には、ちゃんと意味があるんですね。
ポイント: 在留年数が積み上がるほど在留期間も伸びていくのが一般的な流れです。年数を重ねても1年更新が続いている場合は、入管が何かしら引っかかっているサインとして受け取り、原因の棚卸しを考えるフェーズだと捉えた方がいいです。
事案に当てはめてみる──興行ビザの性質
ここで少し、ご本人の事案に近づけて考えてみたいと思います。
ご本人の場合は興行の在留資格だったということを、ご自身の動画で述べておられました。
興行の場合、実は5年が出ないんですね。3年・1年・6月・3月といった構成になっています。短期の単発公演だと30日といった設定もあります。
最長の3年や1年が出るのは、外国人力士やプロスポーツ選手、日本で長く興行活動を続けてきた実績のある方が中心、というのが実務的な感覚です。
なんで興行だけこんなに短いかというと、これは在留資格の性質の問題です。
興行の在留資格って、基本的にはプロ野球の外国人選手とか、ミュージシャンとか、そういった方々が国内で試合やライブ活動、そのツアーなんかをしたり、ということが前提に置かれているので、基本的にはそんなに長くはないというのが大前提なんです。
せいぜい、日本縦断のミュージックツアーをやっても1年くらい、というところが皆さんの感覚にあると思うので、興行で3年が出ているところはあまりないんじゃないかなと思います。力士とかぐらいでしょうか。
言い換えると、興行の在留資格を更新し続けるということが、実はかなりハードルが高いんですね。というか、正確には、そもそもあまり想定されていない使い方に近いような気がします。
興行を用いて、国内で例えば10年くらい興行活動をやる、というのは、皆さん想像できますかね? 少なくとも僕はちょっと思い当たらないんですね。プロ野球選手でたまにいる、10年近く国内でプレーしてFA資格を取って日本人と同じ規定になっちゃう選手、メッセンジャー投手とかビシエド選手みたいな方はいるにはいるんですが…。彼らがずっと興行ビザのままだったかは別の話ですし、あくまで単年系の契約を積み重ねた先の話です。
それ以外の活動で10年単位で活動するとなると…やっぱり思い浮かばないんじゃないでしょうか。
なので、興行の在留資格が年単位の更新が実質的に義務付けられてしまうというのは、やむを得ないところではあるんじゃないかなと思います。
YouTuberを興行で取るということ
それから、興行というのは基本的に、その人が演目をすることで何かしら報酬が発生するという、ビジネススタイルになります。
ご存じのとおり、プロ野球選手にしても、ミュージシャンにしても、映画俳優にしても、お給料の出どころというのは、それなりの企業さんがバックについているんですよね。いわゆるプロモーターといいますか、そういった形で。
そこがお金を出すとか、収益性があるところを見立てて、ある程度の基準として在留期間が出てくる、というところではあります。
これが、YouTuberを興行で取りに行くとなると、結構しんどいと思います。
YouTubeというものの性質上、その単一プラットフォーム、つまりGoogleさんの機嫌一つで収益が消えたり増えたり減ったりする、という構造ですよね。これは、外国人の方が「これをベースに在留資格を取るんだ」というロジック付けには相当難しいように、僕は考えています。
もちろん、別の組み立てが取れる方なら話は別かもしれませんが、少なくとも個人事業で、かつプラットフォーム依存のビジネスとなると、継続性のところでやっぱり厳しく見られてしまうんじゃないかな、と思います。
……興行で長くいる、というのはそもそも結構大変なんですよね。
少し踏み込んだ話──「興行で取れる」の現状
ここで少し、踏み込んだ話をします。
法的にロジカルに読むと、実は「広告収入目的での動画制作・配信」は興行に該当しない、という解説が複数の専門家サイトで見られます。
興行は本来、特定の施設で公衆に見せたり聞かせたりする活動を前提にしているので、配信プラットフォーム上の動画投稿活動は、興行の本来の射程からは外れる、というロジックですね。これは僕も基本的に同意するところです。
ただ一方で、現場の運用としては、僕自身、別件の相談で入管にチェックを入れたことがあるんですけれども、そのときの回答としては「興行」という整理が返ってきました。とはいえ、この感覚は僕たち行政書士も含めて現場で割れているような気がしているところです。
どういうことかというと、技人国(技術・人文知識・国際業務)はあくまで企業に雇用されて専門知識を活かす活動が前提で、個人事業のYouTuberはそもそも該当しません。芸術ビザも「自身の作品の制作・販売」が中心で違う。そうやって既存の在留資格を順番に当てはめていくと、消去法で興行に行き着くわけです。
法的にロジカルに読むと興行もかなり怪しい、けれど他に当てる枠がない。だから現場運用としては興行で扱われてきた、というのが過去のYouTuber活動と興行の関係だったように見えます。
動画を作成し単一のプラットフォームから広告収入を得る、という比較的新しいビジネスモデルに対して、在留資格の制度が明確に対応しきれていない部分があるようにおもいます。
一応現場としては、それに近い形で運用は出来てはいるが、完全にはめ込むとなると…といういつもの行政感です。
……このあたり、将来的に解消されるんだろうか…。
それはさておき、ご本人の場合、その後、興行から経営管理ビザへの切り替えを試みられたようです。動機までは分かりませんが、興行の不安定さを踏まえると、経営管理への切り替えを試みること自体は、制度の建付けから見ても悪くない方向性だと思います。1年更新で続いていく状態よりは、5年が出る可能性のある経営管理に乗せ替える方が、安定性の観点では筋が通っている。
ただ、その経営管理ビザの方も、ちょうど改正のタイミングで状況が大きく動いていた、というのが今回のケースの構造かなと思います。経営管理の話は、シリーズの2本目で詳しく整理しますので、そちらに譲ります。
ポイント: YouTuber活動を興行で取るというのは、法的にロジカルに読むとかなり怪しい領域です。ただ、技人国にも該当せず、芸術にも該当せず、と消去法で当てはめていくと興行に行き着く、というのが現場の実情でもあります。制度として整理が追いついていない領域、と言える状況です。
落としどころ──未来視点で考えると
実際のところ、今回の事例を整理してみると、興行で1年とはいえ継続して在留資格が出ていたこと自体は、非常にすごいことだと思います。これは、入管が一つひとつの更新申請に対して適正な判断を積み重ねてきた結果でもあります。
ただやっぱり、これからも同じ判断が続くか、というところは別の問題なんですよね。
今、就労系の在留資格全体が厳格化の方向に動いています。経営管理ビザの2025年改正、留学ビザの資格外活動把握強化(2026年4月運用開始)、技人国の審査厳格化、不法就労統計の公表。それぞれは別の動きに見えますが、「実態審査の厳格化」「安定性の重視」「公平性の確保」という共通の方向性で動いているように見えます。
そう考えると、過去には通ってきた組み立てが、未来も通るとは限らない。これが、今回の事例から学べる一番大きなポイントかなと思います。
特に、興行に限らず、他の在留資格でも、最長が出ずに1年とかちょっと中途半端なものが続く場合というのは、入管としてやっぱり何かしら様子を見たい、というところがあるんだと思います。
それは個人の問題である場合もあれば、所属している会社自体の体力、先ほどお話ししたお金の出どころというのは入管としても関心事項の一つですので、事業としてどうかな、というところを見たい場合もあります。
ですので、もし1年更新が続いている状況にあるなら、何が原因で年数が伸びていないのかを一度棚卸しすることをおすすめします。個人の活動実態の問題なのか、所属企業の状況なのか、在留資格と活動内容の整合の問題なのか。原因によって打ち手が変わってきます。
ちょっと言葉を悪くすれば転職を検討したり、企業側であれば経営の安定性を整えたり、そういった部分も踏まえて、できれば長く在留できるように動いていくのが、結果的には一番安全な道ではないかなと思います。
僕個人としても、外国人の方がいらないなんてことは思っていないですし、日本に来たいという熱意のある外国人の方が、適正に長く日本にいられるというのは、国にとっても、みんなにとっても良い部分があると思います。在留期間という数字を入管からのフィードバックとして受け取って、立て直しの材料にしていただけるといいんじゃないかな、というふうに思います。
ポイント: 過去に通ってきた在留資格の組み立てが、これからも同じように通るとは限りません。就労系の在留資格全体が、実態審査の厳格化・安定性重視・公平性確保という方向で動いています。1年更新が続いている方、これから在留資格を組む方、いずれにとっても、時代の変化を踏まえた立て直しを早めに考えていく必要があります。


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