経営管理ビザの更新、経過措置の期間はどう立ち回るのか──新基準との向き合い方を整理してみる

昨年10月に経営管理ビザの上陸基準が改正されました。資本金の引き上げが大きく取り上げられましたが、実際には常勤従業員の雇用、日本語能力(CEFR B2相当。JLPTで言えばおおむねN2あたり)、経営経験、管理職報酬といった複数の要件が新たに加わっています。

「新規で入ってくるのはかなり難しくなる」とニュースにもなっていたので、ご存じの方も多いと思います。

ところが、この改正は基本的に新規の方向けの変更です。では、すでに経営管理ビザを持っていて、これから更新を迎える方はどうなるのか。ここについては同業の間でも議論になりますし、実際にご質問をいただくことも増えてきました。

今回は、入管庁が公開している情報をベースに、更新時の状況を少し整理してみようと思います。

ただし、一つだけお断りしておきます。 制度が変わって間もない状況で、更新の件数もまだそこまで積み上がっていません。ここからお話しするのは、あくまで見えてくる情報からの整理であって、確定的な運用ではありません。「おそらくこうだろう」という段階の話ですので、その点はご注意ください。

ポイント: 新基準は資本金だけの話ではない。常勤雇用・日本語能力・経営経験など複数の要件が新設されている。完全適用は2028年10月から。


目次

入管のホームページから見えること

更新に関して確認できるポイントは、大きく二つあります。

まず、新基準の完全適用は2028年10月からです。資本金(事業規模)の引き上げだけでなく、常勤雇用や日本語能力といった新要件も含めて、ここからは本格的にすべての基準を満たさなければいけない。

では、今からその日までの間に更新を迎える方はどうなるのか。入管庁の案内では、施行から3年を経過する日までの間に更新を行う場合は、改正後の基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の基準に適合する見込みを含めて総合的に判断を行う、という趣旨のことが書かれています。

非常に中途半端な書き方ですよね。「適合しなくてもいい」とは言い切っていないし、「適合しなければダメ」とも言っていない。フリーパスではないが、即アウトでもない。

……役所の文書って、こう書かれると逆に困るんですよ。

ここをもう少し読み解いてみます。

ポイント: 経過措置期間中は「新基準を満たしていなくても即アウトではない」が、フリーパスでもない。将来的に基準に適合する見込みがあるかどうかが問われている。


「専門家の評価書」は実質的に必要だと思っておいた方がいい

入管庁の案内にはもう一つ気になる記載があります。更新審査においては、経営に関する専門家の評価を受けた文書を提出いただくことがある、という記載です。

「提出いただくことがある」という書き方なので、出さなくてもいいのかなと思いがちです。出す側からすれば、出さなくて済むものは出さない方がいい、と考えるのは自然なことです。

ただ、僕の読みとしては、おそらく出さなければいけない場面がほとんどになると思います。

……入管の「することがあります」、だいたい「します」ですからね。

ここで問われているのは、「この事業は3年後までに新基準に適合するだけの経済的な成長が見込める」ということを書面で示せるかどうか、です。資本金の増資、常勤従業員の雇用、日本語能力の確保──こういった要件を将来的に満たせる見通しがあるというところを、第三者である専門家に評価してもらう。それが更新審査の通り方を左右する、というのが僕の見立てです。

具体的には、今の新基準の各要件との距離を測って、その距離を実績の延長線上にある計画として埋めていく。それを税理士さんや会計士さんに評価してもらって、書面として添付する。以前の記事(keiei-kanri-visa-before-you-apply)でもお話ししましたが、経営管理ビザに関しては「要件を満たせば許可が出る」という構造ではないので、将来に向けた説明をどう作り込むかが勝負どころになります。

ポイント: 「提出いただくことがある」は、実質的には「出してください」に近いと思っておく方が安全。3年後の新基準到達に向けた計画を、専門家の評価付きで書面化する準備を早めに。


見られるのは「将来の見込み」だけではない

もう一つ考えておいた方がいいのは、将来の見込みだけでなく、これまでの滞在活動の中身も明確に記載した方がいいのではないか、という点です。

今持っている在留資格で何年活動してきたのか。その間にどういう事業をしてきたのか。売上・従業員・事業所の推移はどうだったのか。これらをしっかり書面で整理しておくことで、「この事業者は経営管理ビザで入って、ちゃんと事業を積み上げてきている」という実績の裏付けになります。

逆に言えば、実績が薄い場合──たとえば、会社は作ったけど実態がほとんどない、売上がずっと横ばい、従業員を一度も雇ったことがない、といったケースでは、3年後の新基準到達を説得的に主張するのはかなり難しくなります。入管としても、過去の実績を見て「この人が3年後に3000万円の資本金と常勤従業員を確保できるのか」を判断するしかないので。

ポイント: 将来の計画だけでなく、過去の実績の積み上げも評価対象になる。実績が薄いケースでは、計画だけで説得するのは難しい。


行政書士としても、正直揺れている

実際、僕たち行政書士の立場としても、ここは非常に切り分けが難しいです。

クライアントは目の前にいる在留資格を持った外国人の方ですから、こちらに寄り添った立ち方をしたい気持ちはあります。でも、期待値を上げすぎて、いざダメだった時にはとんでもないことになる。何より入管の言い分もわからないではないので、そこを無視して物事を進めるわけにもいかない。

正直なところ、僕たち行政書士は今、この問題に関して感情的にかなり揺れ動いています。

僕の気持ちとしては、1年様子を見てあげてくれよ、と思います。いきなりこんなに制度が変わったわけですから。でも入管としては、基準に達しないなら体制を整えてから来てください、というスタンスも理解できる。どちらも批判はできない。


……で、結局どうするか

正直に言えば、この記事を書いていても「これが正解です」とは言い切れません。制度が動き出したばかりで、実際の更新事例がまだ十分に積み上がっていないからです。

ただ、一つだけ確かなことがあるとすれば、待っていても状況は良くならないということだと思います。

更新申請自体は在留期限の3カ月前から出せます。でも、3カ月前になってから動き始めるのでは遅いと僕は思っています。専門家の評価書を準備するにしても、これまでの事業実績を整理するにしても、それなりに時間がかかる。できれば半年くらい前の段階で、ある程度の準備──というか前フリのような話は始めておいた方がいいと思います。

……3カ月前から申請できるのに半年前って、ちょっと先走りすぎでは?と思うかもしれません。でも今回はそれぐらいです。

更新と聞くと、「出すもん出したら通るでしょ」と思われがちです。まあ、もともと入管の更新がそんなに素直なものでもないんですが、今回の改正はかなり大きかったので、なおさらです。自分の事業が新基準のどこに届いていて、どこに届いていないのかを棚卸しすること。届いていない部分について2028年10月までにどう埋めるかの道筋を描くこと。そしてその道筋を第三者に評価してもらえる形にしておくこと。

さすがに1年前となると、そこから更新日までに事業規模が変わってしまうので話は別ですが、半年前くらいから動き始めるのが現実的なラインだと思います。

今できるのは、そこまでです。運用が固まってきたら、またこのブログで続きを書きます。

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この記事を書いた人

大阪を拠点に、建設業許可・在留資格・ドローン・障害福祉などの許認可手続きを中心に取り扱っています。
法律を専門的に学んだ経験を背景に、複雑な手続きの要点を分かりやすく整理し、実務でつまずきやすいポイントを拾い上げて紹介しています。
ときどき雑談や趣味の話題も交えながら、専門的な内容をできるだけ読みやすくまとめているブログです。

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