前回に引き続いて、経営管理の更新についてのお話しです。
前回の記事の冒頭でも触れましたが、経営管理ビザの新規入国に関して基準が引き上がったという話は、去年の10月頃から始まっていて、もうぼちぼち浸透したのかなと思います。
ニュースなんかを見ていても、話はどちらかというと更新のほうに移ってきている気がします。
というのも、更新でも今回の基準が当てはまるので、この基準に持ち込むとどういうことが起こるのか、といった記事が増えてきているからですね。
街中中華やネパール系のカレー店が絶滅するかも…みたいなニュースがそれです。
制度の建て付け──新基準の中身、経過措置の3年間をどうたちまわるのか、専門家の評価書はどう位置づくか──については、前回の記事で一通り整理しました。今回はその先の話です。「で、実際のところどうすれば通るのか?」 、について、僕がどう考えているかというところをお話ししたいと思います。
相変わらずのお断りですが、あくまでその不確実性の中で、僕が現場でどう見立てているかという話です。確定的な運用の話ではなく、あくまで一人の行政書士の判断の話として読んでください。
ポイント: この記事は前回の制度解説記事の続編。制度の建て付けは前回記事を読んでもらうとして、今回は「自分のケースはどう見極めるか」という実践の話に進みます。
段階的計画を見せる──いきなり跳ねるのはムリ
経過措置の3年間を「猶予」として捉えると、たぶん間違えます。あれは「準備期間」です。
今の段階から、たとえば「今年更新だ」という方が、いきなり3カ月後・2カ月後に「2500万円増資して、人雇ってなかったのに人雇って」というのは、さすがにハードルが高すぎます。
……というか、それができるならそもそも前から困ってないですよね。
なので、3年かけて段階的にやっていく姿を見せるのが大事だと思っています。今年はここまで、来年はここまで、再来年に新基準到達、というようなロードマップを書面で示せると、審査官にとっても「ああ、ちゃんと考えてるな」と読める材料になるんじゃないかなと。
前回記事で触れた専門家の評価書も、こういう段階的な計画の裏付けとして使うのが本来の姿だと思います。
ポイント: 一気に新基準に届かせるのは現実的ではない。3年の経過措置を「猶予」ではなく「準備期間」として段階的に積み上げる計画を示すこと。
事務所の独立性──ここはワンチャンある話
新しく加わった要件の中で、ちょっと悩ましいのが事務所の独立性です。
一般的に、ワンルームを自宅兼事務所にするのは、まあ普通にNGです。
ただ、たとえば1階が事務所で2階が住居スペースといった一戸建ての建物の場合は、建物構造によっては通ったりするという話も聞きます。なのでチャレンジしてみる価値はあるのかなとは思っています。
ただし、「この建物なら絶対大丈夫」という基準がまだ示されたわけではないので、ワンチャンあるぐらいの認識で考えてもらえばいいんじゃないかなと。
賃貸契約や間取り図、写真あたりを揃えて、独立性を客観的に説明できる材料を準備しておくのが現実的な動き方になります。
ポイント: 自宅事務所は原則NGだが、構造的に独立性が確保できる建物(一戸建ての1階事務所など)はチャレンジの余地あり。ただし確実な基準はまだ示されていない。
……で、ネガティブに見るとどうなるか
ここまでは「どうやって新基準に向かって積み上げていくか」という話だったんですが、もう少しネガティブな方向でも考えておく必要があると思います。
たとえば、経営管理で5年ほど在留しているけれども、やっぱりまだ事業所は500万円のまま、会社経営の状況を見ても財政的によろしくない──こういうケースは、やっぱりもう厳しいんじゃないかな、と見たほうがいいです。
正直なところ、5年かけて無理だったことを急に3年でやれと言われても、相当ハードルが高い。それを「合っていない」と判断されても、まあ仕方ないですね。
何か跳ねるものがあったり、あるいはこの5年の経験をもとに何か事業転換を大きく打ち出すということであれば、もしかするかもしれません。ただ、相当辛くなっていく方向だというのは見ておいたほうがいいです。期待は厳禁です。
期待値のコントロールについて──僕のスタンス
この話を聞きに来る方は、基本的に僕に希望を見せてほしいというスタンスで来られると思います。
「行けますよ」と言ってもらえると安心するので。
ただ、相談にせよ何にせよ、僕のほうでリアルに見ないといけない部分があって、基本的には「厳しいですよ」という方向で話を進める傾向にあります。
もちろん、僕のほうのリスクヘッジ的な部分はないとは言いません。
ただそれ以上に、希望的観測を述べてダメだったときの落胆のほうが大きいので、期待値のコントロールは少しさせてもらいます。
そんなに甘くはないですし、何より入管──今の世の中の流れがどうしても厳しく見る方向に振れているので、足りない部分を「行けます」と言って受任する気もないですし、それでお金を取る気もありません。
そこも含めて経営判断ということで、日本の市場をどう見るかというところを考えてもらえばいいのかなと思っています。
「日本にいたい」だけなら、別の道もある
これは脱法的な話ではないんですが、もし「とにかく日本にいたい」ということであれば、在留資格を変えてしまうのも一つの手ではあります。
たとえば日本人が経営者になって、本人はその会社に雇われる形で技人国に切り替える、といった形ですね。制度的にはできます。
ただ、今の入管の状況を考えると、そのすげ替えに対して相当の説得材料がないと厳しいんじゃないかなと思います。向こうも経歴は見ているので、「経営管理から技人国に変わりました」「技人国に応対する学歴があるんですか」「何の業務をするんですか」「その業務を継続する動機はありますか」というところが当然問われてきます。
……まあ、やればやるほど話がややこしくなる方向ですね。
制度趣旨──外国人がいらないわけではない
最後に、この手のことを考える上での制度趣旨の話を少しさせてください。
今回の改正は、決して「外国人がいらない」というメッセージではないと思っています。国が気にしているのは、経営がうまくいかなかった外国人の方が、日本の社会保障の負担に影響を与えてしまうことを回避したい、というところじゃないかなと。
とりわけ、万博対策で施行した【簡易民泊】との変なシナジーが発生して、本来リスクが高い経営者まで入れてしまった…その反省の反動が強い様に思います。
もちろん、まっとうにやっても失敗するときは失敗するので、そういうときに社会の制度に頼ること自体はネガティブな話ではありません。ただ、明らかに確率が低い、期待値が低いものに対しては事前にハードルを上げる、というスタンスに変わってきている。それが今回の改正の本質かなと思います。
なので、更新を控えた方に僕からお伝えしたいのは、自分の事業をそのハードルの高さに照らして冷静に見直してほしいということです。届きそうなら、きちんと計画を作って積み上げていく。届かなそうなら、別の選択肢も含めて考える。どちらも経営判断として、ちゃんと向き合う価値があると思っています。
おわりに
個人的に、今回の改正は必要だけど実効性はどうか…という点は注視する必要があるのかなと思っています。
だいたい、制度を悪用する小狡い手合いは、この手の引き上げをしても抜けてしまうものですから。
他方で、(この手の規制強化は常に)これまで日本で「まっとうに」やっていた方の方がダメージが大きいものでもあるので、その点はもうちょっと汲んでほしいな…というのが正直な気持ちです。
とはいえ、気持ちでは審査基準は動かないので、悩ましくもあり。
経営管理ビザの更新については、まだ実例が積み上がっていないので、ここに書いたことも「現時点での見立て」の域を出ません。運用が固まってきたら、またこのブログで続きを書きます。


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