前回の相続についての記事の中で、『遺言書があれば、相続の問題は基本的にそれで解決』とまとめました。
(ただし、遺言書の有効性を争う場合は別の問題が生じる)
色んな調査が省けますし、何より財産の調査など『当人が一番知りえている情報』を元に財産の分け方を指示するわけですから、一番正確に分配ができるというものです。
そんなわけで、僕たちのような専門家からすれば、『みんな遺言書をつくってくれー』と思ってる人も結構いると思われます。体裁や、分け方のリスクなんかも事前に相談いただければお話しすることはできますし、遺される家族の方と一緒にお話しできるのもメリットと言えるかもしれません。
とはいえ、みんながみんな作れるだけの時間や手間、あとは覚悟が決まってるわけでもないのも事実。
なので、今回はその中でもとりわけ『遺言書を作っておくべき』方についてお話ししようと思います。
遺言書を作るべき人
結論を先に述べましょう、それは
子供がいない人です。
子なし家庭といった方がいいのでしょうか。
決して差別的な意図があるわけではなく、法律の仕組上明らかに子供がいない家庭の相続はややっこしくなるのです。
続いて説明していきましょう
法定相続人
同じく以前の記事でも書きましたが、相続人は法定されており、メンバーは家庭の構成によって変わります。
子供がいない場合、相続人は親、又は兄弟姉妹です。そこに配偶者が加わります。
もうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、自分の配偶者と自分の両親又は兄弟姉妹が、自分の財産について話し合う必要があるのです。
要は配偶者からすれば、義両親義兄弟とお金の分け方について話し合う必要があるわけです。
その負担たるや、嫁姑問題の比ではないでしょう。とんでもないカオスです。
死して尚、自分のパートナーにこのような負担をかけるぐらいであれば、ちょっと労をかけて自分の遺言書を作って、財産を全て配偶者に渡した方が、丸く収まるとは思いませんか?
兄弟相続の場合における、相続人の調査の手間
兄弟相続の場合は相続人の調査も相当骨が折れます。
なぜならば、異父・異母兄弟の存在を確認するために、被相続人の両親が生まれてから死亡するまでの戸籍を揃える必要があります。
生まれてからなので、両親が結婚して作った戸籍に留まらず、両親の両親つまり祖父母の戸籍も揃える必要が出てくるのです。
これは少し実話…もとい僕の家族の話が入っているのですが、今のシルバー世代、取り分け戦前生まれの方ってやっぱり幼少のころ相当苦労というか、色々あったみたいなんですね。
ある事情で、僕の御祖母さんの戸籍を生まれから死亡までそろえたのですが、幼少期にあっちこっちに養子に出された記録がありました。
「本当、凄まじい時代だったんだなぁ」という感傷に浸りながらも、実務的には全部の戸籍を揃える必要があるので、送られてくる戸籍を読んで、「あー、〇歳の時にここから来たのか…ということは、次は…」ということを繰り返しました。
今は広域交付なので、自分の御祖母さんの戸籍はお住まいの都市から請求できますが、それでも請求しては読んでまた請求しては流石に疲れました。当然部数も嵩むので、手数料もそれだけ…。
家の話はこれで終いとして、養子に出された以外にも複雑な話として、両親が離婚・再婚をしている場合があります。それぞれの戸籍を再婚先へと追っかける必要がありますからね。
特に再婚先で子供がいるのかいないのかと結構ドキドキする瞬間でもあります。
当然、再婚先で子供がいればその子供は兄弟として相続人になりますし、その義兄弟も交えて相続の相談が必要になります。
連絡を取るだけでも一苦労です。
そんなわけで、兄弟相続は何かと地雷というか、手間がかかる部分が異様に多いのです。
終わりに
今回の話をまとめると
自分に子供がいない人は、遺言書を書いた方がいいですよ。
とりわけ、既に両親が他界して兄弟姉妹のみが残されている人。
ということになります。
究極的には「自分が死んだ後の手間なんでしらねぇよ」という放り投げもできなくはないですが、そこは人の情と言いますか、結局のところ手間をかけさせたらかけさせただけ、「あの人の相続は大変だった」とことあるごとに話されるだけです。
他方で、遺言書を書いた場合も話はされると思います。
「遺言書があったから楽だった」と
どうせ死後に自分の話題が出てくるなら、ちょっとでもいい様に話してもらう方がうれしくはないですか?
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