昨年10月に行われた経営管理の上陸基準の変更から、かれこれ半年が経とうとしています。
色々と問題というか、混乱も生じてきたなというのが最近の感覚です。
具体的には、新規申請の人数が大幅に減った—96%近く減ったという報道もさることながら、更新に関してもかなり話題をさらっている印象です。実際、私のところにも更新を巡っての相談が来ますし、他士業さんとの情報交換をする際にも、この更新の運用がどうなっているのかという話題が出る。
やはり今、業界的にホットな論点だなと感じています。
ちょうど東京新聞さんが、街中の外国人飲食店経営者の経営管理ビザの更新ができないという問題をセンセーショナルに取り上げました。何十年も日本に住んでいる外国人が、急に在留資格を失うのはおかしいのではないか、という論調です。
ここに関して、行政書士の端くれとして少し思うところがあったので、記事にしてみようと思います。
なお、本記事では「資本金6倍化が政策手段としてペーパーカンパニー対策に妥当なのか」という論点には立ち入りません。あくまで、在留資格制度の原理原則という観点からの話です。
大前提を二つ確認する
話に入る前に、押さえておきたい大前提が二つあります。
ひとつは、経営管理という在留資格の立て付け。
もうひとつは、今回の上陸基準の変更と、それに伴う更新ルールの変更です。
経営管理とは何か
在留制度上の経営管理は、文字どおり「経営者をする」「管理者をする」ための在留資格です。ですので、たとえば先ほどのニュースで挙がっていた飲食店の場合、シェフをしたり、ウェイターをしたりという現業的な活動はできません。
あくまで経営者として事業を回すための資格である、というところをまず押さえる必要があります。
更新ルールの変更
今回の上陸基準の変更にあたっては、3年間の経過措置が設けられています。この間の更新申請については、3年後にどうなっているかという見込みも含めて、総合的に判断する運用です。今3000万円に満たないから直ちにダメ、という話ではありません。3年後に満たされる見込みがあるかをしっかり考えなければいけない、という話になっています。
ここから、報道に対する違和感
さて、ここからが問題の部分です。
今回ニュースで話題になっている中小企業、特に飲食店—中華料理店、インド・ネパール系の方がやっているカレー屋さんなどの経営者について、今回の変更で更新ができなくなる、という話を非常によく聞きます。報道や、一部政党もそういうことをかなり主張しています。
実際のところを考えてみると、たしかに街中の飲食店で資本金3000万円というのは、ハードルが高すぎるというのは間違いないでしょう。なので、彼らが経営管理を続けるというのは、ほぼほぼ厳しい—これは事実だと思います。
ただ、このアプローチに関しては、専門家の端くれとして少しだけ疑問を持っています。
経営管理の原理原則から考える
まず大前提として、先ほどお話したとおり、経営管理はあくまで「経営者管理者をするための資格」です。
街中の飲食店の方は、当然ながらオーナー兼シェフという方がかなりいるように思います。私の見立てですが。
そして、オーナーシェフという働き方は、残念ながら在留資格・経営管理の立場からは認められていません。今までが少し甘すぎたというか、ザルすぎて通っていたという時代背景はあるのですが、制度の原理原則を考えたとき、オーナーシェフというスタイルは認められていない。これが大前提です。
在留資格は誰のためにあるのか
ここで一歩引いて、在留資格制度そのものを考えてみたいと思います。
在留資格制度を考えるときに忘れてはいけないのは、残念ながらこの制度は外国人のためにある制度ではない、ということです。
日本という国を支えるため、繁栄させるために必要な人材は何か?、という観点からルールが設定されている。
これは経営管理に限らず、おそらくほぼすべての在留資格に該当します。日配等の身分系の一部には人道的な配慮の側面もあると思いますが、就労系の資格に関しては、ほぼほぼこの原理で動いている。日本にとって何が求められているのか、という部分です。
実際のところ、経営管理に関しても「どういう経営者が欲しいのか」というところで基準が変わってきている、と見ることができます。
たとえば会社設立。日本人であれば資本金1円でも会社は作れます。しかし外国人の方が経営管理ビザを取るには、旧制度でも500万円、新制度では3000万円ないと会社は作れない。日本人と外国人、同じ経営者でも日本社会から求められているものに差がついている、という構造がはっきり出ています。
技人国も同じです。大学卒業の要件、実務経験の要件があって、すぐに貢献できる人材が求められている。
日本人の労働者のように「理系出身だけど営業をやる」みたいな、学んできたことと仕事のアンマッチが許容される働き方ではない。学歴と職務の紐づけが厳しく見られます。
こうやって見ていくと、それぞれの在留資格に「日本の社会が求めている貢献」がどうしても紐づいてきている、という構造は避けようがないんですね。
その観点から見たとき、果たして街中の中小の飲食店に対して、『経営者が外国人であること』が社会として求められているのか。これは少し一歩踏みとどまって考える必要があるんじゃないかと思います。
ちょっと冷たいかもしれませんが、考えなければいけない部分です。
私もカレーが好きで、ネパール系のカレー屋さんとかはちょくちょく行くのですが、あくまで欲しいのはシェフそしてその料理であって、ビジネスマンが欲しいわけではない。ここを切り分けて考える必要があるのではないかと思います。
ですので、オーナーシェフという形は、本来であれば、オーナーとシェフを分離し、それぞれ在留資格で取っていくほうが素直なのではないかと思います。
「悲劇」を語る前に検討すべき選択肢
その上で、もうひとつ違和感があります。
こうした報道はセンセーショナルになりがちで、「十年以上日本にいたのに急に居られなくなった」という悲劇性をかなり前に出します。私も人として、十何年という生活基盤が急に奪われることへのダメージには思いを馳せますし、痛ましいことだと思います。
ただ他方で、在留資格のカテゴリーで入ってきている以上は、その10年、20年の中で、自分が今後どういう形で日本にいるのか、将来的に祖国に帰ることも念頭に入るのか、そういったものを全部ひっくるめて、在留資格に向き合っていく必要があったんじゃないかとも思うのです。
極端な話、10年以上日本にいたのであれば、永住への切り替えという選択肢がありえます。今回の経営管理の変更を受けても、経営管理がダメなら事業の経営自体は日本人 —それこそ商店街にいる信頼できる方— にお渡しして、本人は今までの経験をベースに技人国や技能で、一シェフとして日本に残るという選択肢だって選択肢です。報道ベースで10年以上日本にいるという話なら、入管との折衝は当然必要になりますが、こうした切り替えは検討の俎上に乗ってくるのではないでしょうか。
そういった在留資格との向き合い方、切り替えの選択肢という論点を抜きにして、お涙頂戴的なフレーミングにされている部分には、専門家として違和感を持っています。
終わりに 今後の外国人人材との向き合いかた
実際のところ、今回の経営管理の変更はかなり急だったという点は否定できません。また、ハードルとしてもかなり高く設定されました。
でもこれ、結局のところすべての在留資格に言えることではあるんですよね。
ある日突然、法改正が起こって更新が難しくなる。
これ自体はもう避けようがありません。日本が法治国家であり、その法の上に滞在が許されているという建付けである以上、どうしようもないことです。
ですので、今ある現状に満足しないというのは少し大事だと思ってます。
例えば、技人国で入ったのなら、将来的に高度人材に移行するとか永住を取るとか…なんかしら自身のライフプランに合わせて在留状況を整理することを念頭に日本での生活を楽しんでいただかないといけないかなと思います。


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