昔のラジコンと今のドローン

ドローンというと皆様どのような機体を思い浮かべるでしょうか。

多くの方は機体の上方にプロペラが2~4枚付いた機体を思い浮かべると思います。

例えばこんなやつですね。

弊所のドローン一号。(今はご隠居)

ドローンを飛ばすには許可がいるということは世間的に結構周知はされてきたように思います。
他方で、「じゃあドローンじゃなければいいのか」といった質問がありました。
趣旨としては、ドローンではない無人航空機、つまり昔のラジコン飛行機のようなものであれば規制の対象から外れるのではないかというものです。

                       多分こんなやつ


これについて、少し解説したいと思います。

目次

1.規制対象の定義を定めた条文

行政系の法律においては、規制対象の定義づけのために、定義を明らかにした条文が定められていることが多いです。
規制の根拠となる法律の2条から5条ぐらいの間にあります。

ドローンのような人が乗ることができないものも含めて、飛行機械は航空法の対象となります。
なので、まず航空法を見てみましょう

第二条 この法律において「航空機」とは、人が乗つて航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器をいう。

(中略)

22 この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000231

かっこ書きが読みにくいので、削除したものはこちら

22 この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるものをいう。

条文によれば、飛行機・回転翼航空機・滑空機・飛行船など、おおよそ空を飛ぶ形態はすべて網羅されているため、先の「ドローン以外であれば規制対象外か」という質問に対しては、規制対象内ですという回答になります。

昔のラジコンが現代のドローンの登場により、巻き込まれるような形で規制の対象とされているようですね。

2.規定をさらに読んでみる

ドローンだから、ラジコンだからという形式的なものでは航空法の規制の対象外となることはありません。
しかし、無人航空機が規制の対象になるということは、無人航空機の定義に当たらなければ、規制対象外です。
そこで、無人航空機の定義について、もう少し読み込んでみましょう

~遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの~

主題になっている、ラジコンは間違いなく遠隔操作機なのでこの定義には当たります。
他方で、紙飛行機やペットボトルロケットのように、一定時間飛行はするものの遠隔操作不能な物体についてはこの一文により、無人航空機から除外されます。

(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)

かっこ書き再誕。
ややこしい一文ですが、きわめて重要なことが書いています。
意訳すれば、重量など総合的に勘案して、危険性の低いものは無人航空機ではないとして、規制から外すとあります。
では、どのような基準で判断すると定められているのか。
国土交通省令こと航空法施行規則を見てみましょう

第五条の二 法第二条第二十二項の国土交通省令で定める機器は、重量が百グラム未満のものとする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327M50000800056

この条文からはとりあえず、100g未満であれば無人航空機ではないと読み取れますね。
ところで、この100gとはどの部分でしょうか。本体のみ?カメラは?電池は?

そこで、国土交通省の解釈基準を見ることになります。

ここで、「重量」とは、無人航空機本体の重量及びバッテリーの重量の合計を指しており、バッテリー以外の取り外し可能な付属品の重量は含まないものとする

https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000043.html

本体+バッテリーの重量が基準となるようです。
おそらく、購入した当時にそこまで考えていた人はあまりいないと思いますが。
何はともあれ、100g未満であれば、規制対象外として航空法の許可申請は不要になります。

3.昔のラジコンを引っ張り出すなら

ここまでの結論として、昔のラジコン機であっても現代のドローンと同じ規制を受けることは紹介してきました。
更につっこんで、今の規制が許可取得以外にはどのようになっているのか、簡単に見てみましょう

3-1.100g以上で無人航空機に該当する場合

私有地における飛行
許可取得以外でと話した直後ですが、一番重要な補足。
航空法では「私有地による規制の除外」を認めていません。
なので、自宅の庭であっても、100g以上であれば航空法の規制対象となります。

・機体登録制度
近年の改正として、無人航空機には登録が義務付けられました。参照
登録により、識別番号の獲得したうえで、これをリモートIDに読み込ませて機体に搭載する必要があります。
例えで言えば、車のナンバープレートです。
ただ、このリモートIDが結構曲者でして、近年発売されたドローンであれば内蔵型がほとんどなのですが、そうでない場合、特に昔のラジコンの場合は外付けする必要があります。
そして、この外付け用のリモートIDが結構お値段します。
おおむね1万円ちょっとぐらいでしょうか。
しかも、元々搭載する予定がなかったものをくっつけて飛ばすので、重量バランスの関係等、結構シビアな問題を抱えるかもしれません。

3-2.100g未満の場合

100g未満の場合、無人航空機には当たらないため、航空法の規制は受けません。
他方で、その他の法令においては、100g未満であっても規制の対象になることがあります。

重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律
簡単に言えば、国会議事堂や原子力発電所など危険地域での飛行禁止です。
100g未満の機体であっても認められていません。

各地方自治体の条例
公園などでは飛行を禁止している自治体はかなりあります。
飛行が認められる場所であっても、事前に管理団体を通す必要があるところがほとんどです。
僕も滋賀県の湖で飛ばしたことはありますが、公園団体に事前の届け出が必須でした。

                    規制としては珍しくはない看板

他、電波法や民法上の所有地問題など、昔からの問題も依然残っています。

4.昔のラジコンを引っ張り出すぐらいなら

おわりに。
身もふたもない言い方ですが、昔のラジコン引っ張り出して飛ばすなら、新しいドローンを買って飛ばした方がより安全だとは思います。
昔遊んでたものを引っ張り出して、もう一度遊ぶというノスタルジーは僕も大好きです。
ですが、規制のクリアと安全面では今一つ劣るというのが素直な感想です。

ドローンの航空法違反事例として、たった10分の飛行でも近隣住民からの通報で書類送検されるということもありました。

空という公共の場所を使うことになりますので、なにより安全に飛行を楽しみましょう。

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