今回は、記事のポイントとして、入管業務に関わっている立場からお話しします。
僕たちは入管業務を行っているので、外国人に関する報道やニュースはかなり敏感に見ています。
その中で最近感じるのは、「移民」という単語の使われ方です。
かなり雑というか、大雑把な使われ方をしながら批判の対象になっていて、外国人の方へのヘイトにつながっている部分があるのではないかと思います。
なので今回は、その点について記事にしてみようと思いました。
あくまで僕たちは行政書士なので、制度的な部分から見ているという点はご承知おきください。
日本は移民政策をとっているのか
まず大前提として、日本は移民政策をとっているのかという話ですが、これは基本的にはノーです。
では移民とは何なのか、という定義から考えてみます。
移民というのは、一言で言うと、外国人の人材をその国に定住させることを目的とした政策です。
つまり移民とは、定住を前提として外国人を受け入れる政策と言ってよいでしょう。
基本的には定住を目的としているので、ビザの優遇であったり、家族の呼び寄せであったり、そういった部分のハードルをぐっと引き下げて、定住しやすくする。
これが一般的に言われる移民政策です。
日本の制度は在留資格で成り立っている
では日本はどうかというと、日本の法制度上、外国人が日本に入る場合は、基本的には在留資格に基づいて入国することになります。
観光などの短期滞在もありますが、それはいったん置いておくとして、中長期の滞在については基本的に「日本で何の活動をするのか」という前提のもとで在留資格が付与され、それに基づいて滞在することになります。
この在留資格の制度を正しく理解しないまま、「外国人が日本に入ってくるから移民政策なのだ」という議論をしてしまうと、話がずれてしまいます。
ここが今回の話のキモかなと思います。
在留資格は更新を前提とした制度
在留資格制度の場合、何が根本的に違うのかというと、基本的に更新制度があるという点です。
制度上は永住という資格もありますが、永住者は在留期間の更新がない資格です。
ただし在留カード自体の更新は必要になります。
そして多くの在留資格では、在留期間が定められており、更新の際にはこれまでの活動の経歴などが確認されます。
その結果、この人が日本に滞在することは適切ではないと判断された場合には、更新が認められず、帰国しなければならない場合もあります。
つまり、日本の制度は定住を前提としている制度ではなく、あくまで活動に基づいて滞在を認める制度になっています。
移民議論でよく挙がる「特定技能2号」
ただし、この更新に関して、少し制度の性格が違うものもあります。
それが特定技能の二号です。
この特定技能二号が、よく「これは移民政策ではないのか」と議論の対象になる制度だと思います。
というのも、この制度は更新回数の上限がなく、さらに家族の帯同も認められています。
そのため、これをもって移民政策ではないのかという批判が出ることがあります。
ただ、この制度をもう少し深く見てみると、また違った見方もできると思います。
特定技能1号から2号へのステップ
そもそも特定技能には一号と二号があります。
二号があるということは当然一号もあるわけです。
一号と二号を比べるとわかりやすいのですが、一号は一定の技能を持った人材が対象です。
そして、熟練した技能を持つ人材が試験などを通じて二号へ移行できる仕組みになっています。
いわばランクアップのような制度です。
RPGでいうところのクラスチェンジ、上位職への転職のようなイメージですね。
二号になるためのハードル
当然ですが、クラスチェンジには条件があります。
この条件は、実はかなりハードルが高いです。
一定の技能水準が求められるだけでなく、実際には日本での就労実績や、税金や年金の納付状況なども確認されることになります。
つまり、日本で真面目に働き、社会の中で一定の役割を果たしてきたという実績がないと、二号へ進むことは難しい制度です。
RPGでもそうですが、上位職になると能力が上がる分、条件は厳しくなります。
在留資格でも同じで、それだけの実績がある人が対象になる制度です。
日本社会にとっての熟練人材
そして、そこまで日本で働いている人というのは、日本社会にとってもかなり貴重な人材です。
特に技能の面では、熟練者と呼べるレベルの人たちです。
単に「日本で一旗揚げてやろう」というレベルではなく、すでに日本の社会や会社の中で役割を持って働いている人たちです。
そういう人材を日本に残すべきではないか、という政策判断があってこの制度が作られています。
それを移民と呼ぶのかどうか、というのは、また別の議論になるのではないかと思います。
海外で言われる移民問題との違い
そもそも海外で移民問題と言われる場合、よく問題になるのは、就労していない人や、社会保障制度にただ乗りしている人たちです。
ですが特定技能二号の場合は、そもそも就労資格です。
働くことを前提に日本に滞在している人たちです。
そのため、海外でよく言われるような移民問題――たとえばスラム化したり、社会保障に依存する人が増えたりといった問題とは、構造がかなり違います。
家族の呼び寄せについても、働いて生活を支えられることが前提です。
その意味では、制度として移民政策の問題と同じものではないと理解しておく方が良いのではないかと思います。
移民という言葉が広がる理由
では、なぜ移民という言葉がここまで出てくるのか。
これは日本政府の制度そのものというより、制度の運用や民間側の問題が大きいのではないかと思います。
例えば、外国人を雇用した会社が倒産してしまう。
その後の就職支援がうまくいかない。
あるいは本来であれば帰国すべきケースでも、さまざまな事情から滞在が続いてしまう。
そういったケースが問題として取り上げられていることもあるのではないかと思います。
つまり制度の問題というより、制度の使い方や運用の問題です。
制度を理解したうえで議論するために
もちろん、僕たち行政書士もこの制度に関わる立場なので、他人事ではありません。
外国人の方にとっては、日本で働くということ自体が人生に関わる大きな選択です。
その中で、制度を適切に使い、日本社会に不必要な負担をかけない形で運用していくことが大切だと思います。
その意味でも、制度の理解をしっかりしたうえで議論することが重要なのではないかと思います。
そして最後にもう一つだけ整理しておくと、「移民」という言葉は、日本の入管制度の中にある制度用語ではありません。
あくまで社会や政治の議論の中で使われている言葉です。
ですので、「移民」という言葉だけで議論をしてしまうと、制度の実態とは少し違う方向に話が進んでしまうことがあります。
入管制度を考える際には、まず在留資格という制度の仕組みを理解すること。
そのうえで議論することが大切なのではないかと思います。

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