育成就労のセミナーを受けてきました ―「なにこれ難しい」という話

来年、2027年の4月から「育成就労」という制度が始まります。今まで技能実習と呼ばれていた、あの制度の作り直し版です。報道でも取り上げられてきたとおり、技能実習は制度として色々と問題が指摘されてきました。それを踏まえて、名前も中身も改めましょう、というのが今回の流れです。

導入を考えている企業さんの中には、もう準備を始めているところもあるはずです。現在は、いわば助走期間ですね。

先日、この育成就労についてのセミナーを受けてきました。私たちのように制度に関わる仕事をしていると、新しい制度が来れば当然、勉強しなければいけません。で、受けてきた率直な所感を、少し書いておこうと思います。

目次

そもそも、何が変わるのか

大きな枠組みから。

技能実習という制度は、あくまで「日本の技術を外国の方に渡して、母国で活躍してもらう」という建て付けでした。技能移転による国際貢献、という看板です。ところが、そこで渡した技術で本人がどうキャリアアップしていくのか、という視点が抜けている、という指摘がありました。育成就労は、その視点を取り込んだ新しい制度です。

つまり、目的が根っこから入れ替わります。「国際貢献」から、「日本国内の人材の育成・確保」へ。ここは押さえておきたいところです。

もうひとつ、実務的な特徴として。育成就労は、就労系の在留資格の中では珍しく、現場の仕事ができるタイプの資格です。建設や農業といった、いわゆる現業に就ける。技術・人文知識・国際業務(技人国)のような高度人材の資格では、こういう現場作業はできません。

そして、日本で足りていない人手というのは、おそらく技人国のようなスペシャルな専門人材よりも、現場のシンプルな人手のほうなんですよね。育成就労は、まさにそこを埋める制度になっている。だから市場としては、それなりに需要があるだろうと見ています。ゲスな見方をすれば、僕も「これはちょっと頑張ってやってみようかな」と思っている、というわけです。

正直に言うと、しんどい

で、ここからが本題です。

セミナーの講師は、入管業界では第一人者と呼ばれる先生でした。その先生いわく、「技能実習の難しさと比べて、3倍か4倍くらい難しいと思ってくれ」と。ちなみに、私たち専門家が受けるそのセミナーですら、時間はなんと3時間、レジュメは85ページ。……もう、この分量の時点で察してほしい感じはあります。

何が難しいのか。ざっくり言えば、ルールが非常に細かく作り込まれているんです。

分野ごとの法令要件が細かく決められていて、そこに一つひとつ適合しないと要件を満たせない。教育のプランニングや、それに伴う費用の設計も出てきます。費用面では、仲介にあたる部分への規制もそれなりに厳しい。試験の費用を誰がどう負担するのか、という話もある。

さらに、通常の就労資格と違って、育成就労は一つの事業者が5人、10人といったまとまった人数を受け入れることを想定しています。そのためか、待遇の公平性にも目が向けられています。日本人と同等以上の報酬を、という労働者として当たり前の前提はもちろんですが、それに加えて、同じ制度で受け入れた外国人同士で、転籍のしやすさや待遇の条件に不当な差が出ないように、という配慮が求められる。これは今回の人材類型に特有の論点だと思います。

転籍そのものも、大きな変更点です。技能実習では、受け入れ先から同業他社へ移ることは原則できませんでした。育成就労では、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められるようになります。当然、転籍が起きればその都度の手続きも発生する。

育成就労は「育成」ですから、当然、在留できる年数も決まっています。その期間を終えたあと、次のステップとして特定技能へ移行するのか、それとも別の区分に入っていくのか。そういった出口の設計も絡んでくる。

要するに、色々な仕組みが入り組んでいて、それを一つひとつ条文に落とし込んでいるものだから、全体としてかなり複雑になっている。制度が一段「大人」になった、そのぶん手強くなった、という印象です。

行政書士として、どう立ち回るか

育成就労は原則3年。その先の特定技能まで含めれば、5年、あるいはそれ以上、日本で働いてもらうことになります。3年、5年と、それだけの歳月をその方に日本で過ごしてもらう。それは言い換えれば、外国人の方の人生の一部をお預かりする、ということです。だからこそ、手続きの精度は緻密なものが求められます。

ここに、もう一つ大きな変化が重なります。行政書士法の改正です。令和8年(2026年)1月から施行された改正で、官公署に提出する書類の作成が行政書士の独占業務であることが、あらためて明確に打ち出されました。「手数料」でも「コンサル料」でも、名目が何であれ、報酬を得てこの書類を作れば違反になる。しかも両罰規定まで整備されています。

育成就労の現場では、受入れ企業を監理しながら、外国人本人の相談対応や保護、生活面のサポートにも関わる「監理支援機関」が中心的な役割を担います(特定技能でおなじみの「登録支援機関」とは別の立場で、そちらは育成就労を終えて特定技能へ移った先で出てくる存在です)。ただ、監理支援機関にせよ受入れ企業にせよ、官公署に出す書類の作成は、その方々の仕事ではありません。そこは行政書士の仕事です。誰が何を担えて、何は担えないのか。この線引きを、制度全体の中できちんと整理しておく必要がある。

打ち合わせのセッティングを含め、システム全体を一つのパッケージとして組み上げていく。そこにこの制度ならではの難しさがあるな、と感じました。

技能実習を受け入れている会社へ、ひとつだけ

最後に、今まさに技能実習で人を受け入れている事業者さんへ。

技能実習がなくなっていくので、今後はこの育成就労のほうに切り替えていかなければいけない、というところが出てきます。……と書くと、いま在留している実習生をそのまま横滑りで切り替えられる、と読めてしまうんですが、そういう意味ではありません。ここは誤解の多いところなので、一言だけ。

在留中の技能実習から育成就労へ、直接乗り換えることはできません。今いる実習生には最後まで技能実習のルールが適用されて、修了後の進路は特定技能への移行か帰国が基本になります。だから「切り替え」というのは、あくまで会社として、次の受け入れから育成就労ベースに仕組みを組み直していく、という意味です。ここは、精度の高いご案内が要るところだと思っています。

制度はまだ動いています。これからも有識者の議論やパブリックコメントを経て、細部が固まったり修正されたりが続いていく。追いかけながら、追いかけながら準備していく、というのが実情です。大変だなあ、と思いながら。でも、需要のある制度になるのは間違いないので、しっかり勉強して、追いついていきたいなと思っています。


(付記)本稿は2026年3月に収録されたセミナーを受けての所感です。その後も運用要領の改正や各種申請の受付開始(監理支援機関の許可申請は2026年4月から、育成就労計画の認定申請は2026年9月から)など、施行に向けた準備は段階的に進んでいます。制度の細部は動いていますので、最新の情報は出入国在留管理庁等の一次情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

大阪を拠点に、建設業許可・在留資格・ドローン・障害福祉などの許認可手続きを中心に取り扱っています。
法律を専門的に学んだ経験を背景に、複雑な手続きの要点を分かりやすく整理し、実務でつまずきやすいポイントを拾い上げて紹介しています。
ときどき雑談や趣味の話題も交えながら、専門的な内容をできるだけ読みやすくまとめているブログです。

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