こんにちは、行政書士の垂井です。
今回はちょっと肩の力を抜いた回です。ニュースをネタにするというよりは、僕が実際に入管で見かけた出来事をネタにした雑談に近いお話です。同業の方との飲みの場でも話題になったくらいの、それぐらいのノリで読んでもらえればと思います。
ただ、中身としては就労系の在留資格で働いている外国人の方、そしてその方を雇っている企業さんには、わりと身近な話だと思っています。
入管の窓口の前で起きたこと
ある日、僕は入管で手続きの完了待ちをしていました。申請書を出して受理されて、お客さんの在留カードと僕の申請取次者証明書が返ってくるのを待っている、という状態です。
その日は非常に空いていたので、どこに座ってもよかったんですが、まあ近くでいいかと、受付窓口のすぐ前に座っていました。
すると目の前で、ある女性の方が申請窓口に申請書を持って行ったところ、どうも受け付けてもらえない、という対応になっていたんですね。
何があったんだろうと……行儀は悪いんですが、座りながら聞こえてくる話に耳を傾けてみると、どうやら在留資格の更新手続きをしようとしたものの、会社側の資料が一緒についていない、と。
「会社の資料はどうしたんですか」という問いに対して、「会社は辞めた。会社の都合で辞めたんだ」という言い方をされていました。
で、その「会社の都合」とは何かというと、どうも期限の決まった有期の雇用契約だったらしく、その期限が切れたので雇用契約が終了した、という様子だったんですね。
当然ながら、今の制度では、就労系の在留資格で、勤め先がない状態、つまり新しい仕事先も決まっていない状態で、在留期間を更新することはできません。窓口の方も、更新はできないので帰国していただくしかない、という説明をされていました。
かなり大きな声で話されていたので、そのあとの話も聞こえてきたのですが、在留期限はいつまでなのかというと、どうも一週間後とのこと。……それは無理だろうな、というのが正直なところでした。
大変なことになってしまったな、と思いつつ、僕のほうは受付が終わったので、そのまま帰ってきた次第です。
ポイント:就労系の在留資格は、勤め先がない状態では更新できません。期限直前に気づいても、取れる手段はほとんど残っていないことがあります。
この方が見誤ってしまった2つのこと
帰りの電車に揺られながら改めて考えたんですが、この方が大きく見誤ってしまったことは2つあるなと。
一つ目:在留資格が「企業との雇用」と結びついていること
一つは、自分の在留資格が企業との雇用と結びついている、ということを認識していなかった点です。
就労系の在留資格は、もちろん本質としては「外国人の方がこの企業で働きたいんです」という建て付けになっています。ただ、実際の中身としては、企業の側からも「この人を受け入れて働いてもらいたいんです」というお願いをしている、という構図が多分にある、と僕は読んでいます。
なので、企業との関係が切れてしまうと、今の在留の状態は維持できない、と考えておいたほうが基本的にはいいと思っています。
この方の場合、有期の契約が終了するということが自分にとって何を意味するのか、つまり、そこで自分の在留資格の前提が終わりを迎えるんだ、という認識が抜けていた。そこが一つ目の問題かなと思います。
二つ目:必要だったのは「更新」ではなく「変更」
もう一つは、このまま日本に居続けるかどうかの判断です。日本に残り続けるのであれば、在留資格の「更新」ではなく「変更」を検討しなければいけなかったんですね。
ここで一つ、この記事を書くにあたって僕自身も調べ直したことがあります。
就職活動のための「特定活動」というと、まず思い浮かぶのは留学生が卒業後に就職活動を続けるためのものです。ただ、こちらは大学などを卒業した方向けの枠で、働いていた方が仕事を失った場合に、そのまま使えるものではありません。
一方で、出入国在留管理庁のページ(「対象となる方」の※4)を見ていくと、倒産や解雇など「本人の責めによらない事情」で働き続けられなくなった方については、就職活動を続けるための「特定活動」で在留しているケースがあることを前提にした書き方がされています。
じゃあ、今回のように有期契約の期間が満了して終わった(いわゆる雇止め)というケースが、その「やむを得ない事情」に入るのかどうか。ここは、公表されている情報だけでは読み切れません。実際には、入管に事情を説明して確認しながら進める、という手続きになると思います。
ただ、たとえこの枠に乗れたとしても、次の仕事が決まって就労の在留資格へもう一度変更するときには、当然また手数料がかかります。それに、変更する先の在留資格と自分のこれまでの経歴がマッチしていなければ、当然ながら許可は下りません。そこも含めて、ちゃんといけそうかどうかは見られると思います。
つまり、こういう確認や調整が必要になることを見越して、契約の終わりが見えた時点で、事前に相談しておくべきだった、というのが一番素直な答えかなと思います。期限まで一週間という段階では、確認する時間すら残っていませんでした。
ポイント:仕事を失った状態で日本に残るなら、考えるべきは「更新」ではなく「変更」。そして、それに気づくのは期限ぎりぎりではなく、契約終了が見えた時点であってほしいところです。
僕たちのような存在の意味と、外国人が日本で暮らすコスト
言葉は悪いんですけど、やっぱりこういうことが起こり得るので、僕たちのような存在にも一定の価値はあるんだろうな、と改めて思ったりします。本来は入管に聞いてもらえばいいところでもあるんですが、困ったときに僕らのような専門家に相談して、どうするかを一緒に考える、という使い方をしてもらえればいいのかなと。
ただ、僕たちも慈善事業ではない、というところがなかなか悩ましいところで。ビジネスである以上、聞かれるだけ聞かれて「じゃあこうしてね」で終わり、というのも難しく、どうしてもある程度お金はかかってしまいます。
そこで、今回は雑談という体なので、少しだけ考えておいてほしいなと思うのが、外国人の方が日本に住むのには、日本人が日本で生活する以上にコストがかかる部分がどうしても出てくる、ということです。
在留資格の更新の手数料ももちろんそうですし、今回のようにトラブルが起こったときに専門家を頼れば、その報酬もかかってきます。
そういったところを事前にフォローしてあげられるような給与体系になっているかどうか。企業さんのほうでも、ある程度見ておいてあげてほしいな、というのが正直な気持ちです。
ポイント:外国人の方が日本で暮らすことには、在留手続きや専門家への相談など、日本人にはないコストがついて回ります。企業さんには、そこまで含めた目線を持っていてもらえると嬉しいです。
最後に:日本で「転職」はあまりポジティブに見られない
最後に、改めての補足です。
外国人の方の就労文化では、転職は非常に馴染みのあることなので、わりと簡単に転職される方も多いです。一方で、日本の就労文化では、転職が一般的になってきたのはつい最近の話ですし、特に在留資格の制度との関係では、転職はあまりよく見られていない、というところも一つ覚えておいたほうがいいと思います。
さっきも言ったように、日本に入ってくるときは「この企業で働くために入ってきます」という建て付けになっています。もちろん、そこを辞めて、今の在留資格の範囲内で新しい会社で働くこと自体は違法ではありません。
ただ、次の更新のときなどに加点にはなりにくいですし、すぐに辞めてしまった場合には、むしろ「この人、ちょっと危なっかしいんじゃないか」と減点の対象になるぐらいの認識で見ておいたほうがいいかなと思います。
転職したときの在留資格の扱いや就労資格証明書については、こちらの記事でも触れています。
日本で働くうえでは、転職はあまりポジティブなものではない。そのことを少し頭に入れておいてもらえればと思います。……というお話しでした。


コメント